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第7回らいだぁ杯・準決勝カバレージ

 プレイヤーには『上位卓慣れ』というものがある。
 高い実力を持つプレイヤーであればあるほど上位卓への進出率が高くなり、それと反比例するように上位卓に進出した際に緊張する度合いは減っていく。
 今回準決勝卓のカバレージを書くにあたり白羽の矢が立ったのは、上位卓を何度も経験してきた『慣れ』ているプレイヤー同士の対戦だ。

「カバレージ書かれるの、拒否権あると思ってました」

『慣れ』ているプレイヤー同士の対戦、のはずだが……。試合開始前、この卓のカバレージを取ると話した際に緊張した面持ちでそう言ってきたのは、チーム『わくわく杯運営』の先鋒であるスリー選手だ。
 よく考えれば、上位卓に慣れてこそいれど、カバレージが書かれることの少ないWIXOSSでは『カバレージ慣れ』をしているプレイヤーは少ないだろう。

「自分と相手の記憶の中だけに留まるはずの試合内容が、文章化して大勢の目に晒される」という緊張感は、ただの上位卓の緊張とはまた違ったものがあるのかもしれない。思えば、無限に殴れるシグニを相手に拳で抵抗しようとしたプレイヤーの姿なんかもカバレージでは残っていたりする。
 ただまあ、ここはらいだぁ杯だ。嫌いなアニメを無理に見なくてもいい権利ぐらいは貰えるだろうが、運営陣がカバレージを取ると言った際の拒否権は、残念ながら存在していない。

 対面に鎮座する『第三回世界大会優勝チームの一員』であるきなこ選手と共に、試合をカバレージに収めさせてもらおう。


きなこ選手vsスリー選手




「終わり終わり!」

 マリガンの最中、スリー選手が唐突に叫んだ。
 きなこ選手とスリー選手はお互いに使用デッキを知っている。どちらも、現オールスター環境でトップメタを走り続ける『5カーニバル』だ。
 このマッチアップは――というか、現行のWIXOSSのかなりのミラーマッチについては――先手側が大きく有利を取ることができる。じゃんけんに勝利した上で1枚マリガンのみのきなこ選手と、後手を取った上で3枚のマリガンを要したスリー選手とで、まず序盤の威圧の面ではきなこ選手が勝利したらしい。

 先手を取ったきなこ選手は手札から《インパクト》をチャージし、Lv1にグロウすると手札から《ケプリ》を切って1枚のコインを得る。
《カーニバルキー》をアンロックすると、サーチしたのは《タネガスペ》《ノベアン》の2枚だ。サーチ内容、しかもケプリは問題なく切っているとなると、彼の手札が非常に整っていることは容易に予想がついた。
 予想通りに、彼の場には《タネガスペ》が2枚並んでターンを終える。

 対するスリー選手は3マリガンというちょっと怪しい状況をものともせず、コイン獲得のために《Zr》を手札から切り、《カーニバルキー》のアンロックはなしで《タネガスペ》2枚を展開する。先手・後手どちらもタネガスペ2枚、そしてどちらもLv4ヒットを成功させており、1t目の展開としてはイーブンだ。きなこ選手はしっかりサーバントでライフを守り、まずライフは6対7。

 先手2t目のきなこ選手も、手早い。彼が手札から《コニプラ》をエナチャージすると、思わずスリー選手が「どんだけハンドに余裕あるんだ」と零す。
 スリー選手もサーバントを手札から切り、ライフは6対6。ケプリ警戒でパワー1000が並ばず、お互いフェアデッキとしてライフをキープし合う、ロングゲーム系のデッキ同士のテンプレート化した進行と言えるだろう。

 ここら辺は一種の'定跡'だ。
 前述の通り、きなこ選手はチーム戦の世界大会を優勝したプレイヤーであり、その時に使用していたルリグはカーニバル。
 一方で、スリー選手はアンリミテッドセレクターを早期にカーニバルで優勝している。筆者が昔彼とチームを組んでWIXOSS PARTY SPECIALを優勝した際の彼の使用デッキもカーニバル。
 お互い、幾度となくミラーを経験しているであろう。過去に何度も繰り返されたであろう道筋を辿る彼らの歩みは本当に早くて、一時的に筆者は試合経過のメモ取りが間に合わなくなりかけた。

 そんな筆者がようやく執筆の時間を取れたのが、スリー選手の後手2t目のことだった。

《タネガスペ》《コニプラ》でリソースを伸ばしたスリー選手。カーニバルはこのタイミングでキーをアンロックしなければ、3t目にコインが獲得できず=Lv4ルリグの強力な起動効果が使えなくなる。
 そのため、《タネガスペ》の連続成功で手札が溢れていてちょっともったいないながら、当然《カーニバルキー》をアンロックしたのだが……。

「は?」「は?」
「嘘でしょ?」

 デッキを何度も確認しながら、スリー選手の口数が一気に多くなり、そして首をガックリさせる。
 彼のサーチ先は、《タネガスペ》《コニプラ》。手札が溢れているのに、更にリソースを獲得するカードしかない。

 スリー選手の立てていた悲しいフラグは、きなこ選手の3t目ですぐに回収される。
 このターンも順調に――本当に、全てが上手く回っていると言わんばかりに順調に、《ノベアン》でスリー選手の《タネガスペ》《コニプラ》を除去したきなこ選手。彼が攻撃に向かうと、スリー選手のライフから姿を現す2枚の《ノベアン》。
 そして、返しにスリー選手が出せた《ノベアン》は1枚。《ラアー》+《カーニバルMAIS》の効果による面の除去が何度も発生しうるミラーにおいて、ライフ1枚1枚は大きな意味を持つ。
 スリー選手のライフは4、きなこ選手のライフは5。

 リソース獲得、除去、どちらも順調に進めてきたきなこ選手が、先手で《カーニバル QN》にグロウする権利を得る。
 調子のよかったきなこ選手は、《QN》の効果で更に調子よく《ソラフレア》を手札に加えることに成功した。持っていた《ヒミコ》と3枚目の《ノベアン》に《ソラフレア》を追加し、彼は素早くアタックフェイズへ移る。

 ここで、明確に一歩分の差が出る。《ソラフレア》によるダブルクラッシュを受けてライフが0になってしまうと、何かの拍子に突然死してしまう可能性は多いにある。
 少なくとも、たぶん、彼の経験上ではそうだったのだろう。スリー選手は《鎧終一触》をベットなしで発動し、《ソラフレア》を《サーバント ZERO》に書き換えることで1枚のライフを守ることを決断せざるを得なかった。

「無理そうだけど……」

 少し諦め気味な口調で、相手の《QN》の的になる膨大なエナを抱えたままスリー選手も《QN》へグロウする。
《ノベアン》が2枚埋まっていた弊害は、ここでも響く。《アトラン》で相手の手札をぐちゃぐちゃにし、そしてそれをリムーブして《ダイホウイカ》《ヒミコ》を立てたスリー選手だが、ラスト1面に面要求シグニを置くことができない。
 仕方なく2面要求でアタックフェイズに入ってみれば、当然きなこ選手の《QN》がスリー選手のリソースを奪い取る。場の《ヒミコ》《ケプリ》、エナの《コニプラ》《ノベアン》が処理されて、これでスリー選手からの攻撃は《ダイホウイカ》の1点しか通らない。
 スリー選手の手札は7枚。攻撃するか若干のみ迷ったが、結局スリー選手は1点を刻むことを選んだ。

 これでライフは1対4。フェアデッキで、先手側に1ターン分の猶予がある。

 スリー選手の「無理そう」という先ほどの発言が、傍目から見ても現実味を帯びてきた。ただでさえ辛いこの状況なのに、カーニバルミラーが持つ『先手有利』の特権がもう一個、ここで発揮されてしまうからだ。

 それは、きなこ選手の先乗りLv5が原因である。
 ただの先乗りと思ってはいけない。きなこ選手はこれでエナにあるばらけたレベルのシグニ達をある程度整理することができ、しかも場を全てLv4にすることで後手側《QN》の起動効果の効率を最低レベルまで下げることができる。
 しっかりとエナからコニプラを処理し切り、そして場を3枚のLv4で埋めたきなこ選手。スリー選手が《QN》の効果を使用しても、場の1枚とエナのLv1・Lv3で合わせて3枚しかリソースを奪い取ることはできなかった。

 ライフ差、アーツ差、リソース差、要求スピード差、そして現時点での運の差。片手が埋め尽くされてしまうほどの差が、両者の間には付いてしまった。
 この時点で『きなこ選手 win』という下書きをこっそりメモに書いていたことをここで白状しておく。形勢は圧倒的にスリー選手に不利だ。

 しかし、スリー選手は諦めない。薄氷の上を履むがごとき線だが、まだ勝ちの芽は残っているのだ。
 1t目にトラッシュに送っていた《Zr》が、ようやく猛威を振るい出す。《QN》効果、《カーニバルキー》による変換、《Zr》の蘇生→効果バニッシュという連続挙動により、スリー選手はアーツを1枚も使わないまま相手の場を更地にしてターンを得る。
 そして、自ターンに移ったスリー選手は、あまり迷わずにリソース獲得用の《ダイホウイカ》、相手への要求を強める《ガブリエルト》、引きなおせた《ノベアン》の3枚を立ててアタックに入った。
 きなこ選手はノーアーツで攻撃を通す。アーツに1枚の差が残ったまま、きなこ選手のライフが2ターン遅れで1枚のデッドゾーンに突入した。

 そして、筆者のタイピングの余裕がなくなるほど順調に、スリー選手の一歩どころか二歩先を進んでいたきなこ選手が、このターンでついに動きを緩慢なものへと変えた。
《ダイホウイカ》《ラアー》《ケプリ》。場の構築は相変わらず順調に見えたのだが、彼はしきりにトラッシュを確認し、自分のデッキに悪態を吐く。

 対戦を真横から見ている筆者には、きなこ選手の管理する領域を見渡す余地がない。ただ、彼の不安要素については大体予想が付いた。
 その予想は、スリー選手がそのターンに迷わず《MAIS》効果で《鎧終一触》を使用し、そして《ガブリエルト》を《ラアー》に変換したところで確信になる。スリー選手が、半歩、進む。

 きなこ選手のトラッシュに、《Zr》が見えていないのだ。

 カーニバルというデッキは《Zr》を封じられた状態で盤面を更地にされると非常に脆いという弱点を持っている。そして、Zrを探すために《ダイホウイカ》でデッキを掘っていたきなこ選手の山札が、実はこの時点で1枚。つまり、《ホルス》で場を埋めても《カーニバルキー》が発動できない。
 スリー選手の後手6t目のアタックに対して、きなこ選手は《アイスフレイム・シュート》を7エナで発動するしかなかった。場を2枚処理し、相手のルリグをダウン凍結し、そして手札から出した《オタガメ》を《ラアー》へと変換して場の一掃。 

 順調だったきなこ選手の行先に、暗雲が立ち込め始めた。

 残った山札1枚をドローすると、きなこ選手のライフからめくれたのは予想通りと言うべきか《Zr》。もちろん、リフレッシュで彼のトラッシュはすっからかんで、起動効果はしばらく使えそうにない。
 しかも、山札を堀りに行った代償で、リフレッシュ後のデッキを再び掘り返す《ダイホウイカ》が彼の手元には残っていなかった。
 序盤に溜め込んでいた'順調'のツケが、こんなところに現れ出していた。

《コニプラ》《コニプラ》《ヘルボロス》と立ててアタックに入ったきなこ選手。変換された《サーバント ZERO》を《ラアー》対策で《Zr》に変換するも、このターンのアタックはスリー選手の《アイスフレイム・シュート》+《オタガメ》に阻まれる。

 そしてその後、スリー選手が、カーニバル同型で優位を取れる進行をやめることは一切なかった。

 後手7t目、手札のカードで最後の《コニプラ》が処理できずに「噛み合い悪っ」と言いながらトラッシュのラアーをエクシードでコピーし、再び3面飛ばしての面要求。半歩。
 きなこ選手は《MAIS》効果で《アイスフレイム・シュート》をコピーするしかなくなり、手札から切った《ホルス》が《インパクト》を呼び、その《インパクト》を《ヘルボロス》に変換して《カイヅカ》込みで3面を防御。

 先手8t目のきなこ選手の《ケプリ》《ケプリ》+《ヘルボロス》がコピーされた《コニプラ》という貧弱目な盤面を《カーニバルキー》の破棄と《ホルス》《Zr》によりノーアーツで再び防御。半歩。
 後手8t目、きなこ選手のトラッシュに《ラアー》がいないこと、前のターンにきなこ選手が《ビカム・ユー》を撃ってラストアーツ《鎧終一触》でほぼ確定したことを踏まえ、相手に《カーニバルキー》の最後のエクシードを吐かせるための《ダイホウイカ》2面によるアタック。半歩。

 先手9t目。ようやく引き当てた《ヒミコ》から場に《ケプリ》《コニプラ》を立てたきなこ選手に対し、スリー選手のルリグデッキからめくれる《ストール・ストーリー》!
 コピーされた《アイスフレイム・シュート》が、きなこ選手の場を2つ飛ばす。きなこ選手はダイホウイカをついぞ引けなかった代償で、未だトラッシュに《Zr》起動用のシグニは揃っていない。半歩!

 Zrは出せず、エクシードは吐ききられ、きなこ選手のルリグデッキにはおそらく面除去能力のない《鎧終一触》。
 後手9t目のスリー選手は《アトラン》でサーバントの所持確率を下げたあと、《ノベアン》で最後の一面を除去し。

 薄氷の先へ、スリー選手が歩み切る。


○スリー選手
●きなこ選手


《ストールストーリー》と《ビカム・ユー》による試合前から付いている防御枚数の差。
《Zr》の有無による試合を通しての防御枚数の差。
 きなこ選手が辛いと呼べた部分も多々あれど、試合の展開は間違いなくきなこ選手優勢に進んでいた。

 それでも試合を投げ出さず、相手の停滞の隙を突き切ったスリー選手が、先にゴールへと辿りつく権利を得た。

 そして、そんな彼は、試合が終わる頃にはもう自分のデッキの改善点を洗い出している。
 ゴールにたどり着いても歩みを止めることなく、次への準備を続ける。その繰り返しが、アンリミテッドセレクター環境で優勝を繰り返す彼の強みなのだろう。
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