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WIXOSS/メタゲームの変遷 3年目

 刷られていけば刷られていくほどに、カードの効果というものはどうあがいてもインフレを重ねていく。
 黎明期の強力アーツ《再三再四》は今や《三令五申》の完全下位互換だし、《クトゥル・アビス》を見れば《デス・ビーム》なんて目も当てられない。
《コード・ピルルク EC》を見て、それでも《コード ピルルク・Ω》を大会で使おうと思う人はおそらくいないだろう。
 カードパワーは、デッキパワーは否応なしに引き上げられていく。それはもう、自然の摂理と言うほかない。

 それなら、デッキパワーの最低値が底上げされるタイミングはいつだろうか? 場合によって様々だが、筆者は『あまりにも強いデッキが登場した時』にその傾向が顕著になると考えている。
 それまでのメタゲームを完全にぶっちぎってしまうほどのデッキが登場してしまった時、周囲もそのデッキに対応できるように強いカードが登場してバランスが取られる。新たな強カードでも手が付けられなさそうなら、もう仕方なく繭の部屋に連行される。
【オサキループ】も【ミルルン・ヨクト】もそれを如実に表していた。一強として暴れ回り、【オサキループ】は黎明期のカードで対応するのは無理だとばかりにすぐに規制され、【ミルルン・ヨクト】はその後半年の間に対抗馬が登場して環境のデッキパワーを大きく底上げした後に規制された。

 毎ターンフルハンデスと2面程度の要求を安定させつつ《コードアート H・T・R》《幻水 グレホザメ》で4~5点要求の盤面も作っていける【ピルルクΛ】。
《エニグマ・オーラ》というアーツ外防御を使いこなしつつ《幻水姫 ダイホウイカ》で要求も安定するようになった【黒電機入り焦熱】。
《幻竜 ボルシャック》による高いビートダウン性能と3面要求能力の高さ、それに加えフルランデスというショット能力の高さも持つ【遊月】。

 ポストミルルンとして登場したカード達は、アグロからコントロールまで、あらゆるアーキタイプのデッキパワーを底上げした。
 駆け足で、環境は過去を振り払い、そして向こうへと走り去ってゆく。

 コントロールは妨害と2桁以上の防御力を当たり前に持ち、ショットはリソース搾取力やロングショットの長さを大きく引き上げてどこからでも虎視眈々と勝ちを狙い、ビートダウンも序盤からの速度と中盤からの殺意を増幅させる。
 そして、プレイヤー達にとって、最終レベルになってからの3面要求なんて当たり前のこと。
 現代に近いそんな水準は、この3年目の時には、もう目の前まで来ていた。


 ところで、ピルルクは好き?




もくじ
タイフーントライアングル――WX13【アンフェインドセレクター】
二極――WX14【サクシードセレクター】~WX15【インサイテッドセレクター】
さらば――WX16【ディサイデッドセレクター】~WX17【エクスポーズドセレクター】
メタゲームに新規で登場したデッキ群



■タイフーントライアングル■

 13弾は、今思い返してみれば『ビートダウン御用達エキスパンション』だったと言えよう。
《博愛の使者 サシェ・リュンヌ》がこの先どう猛威を振るうかは、多分5年目のところでギリギリ説明できそうだ。《三焼揃踏》が将来とあるデッキを大幅に強化することも、多分3年目の最後の辺りに解説できるだろう。
 とりあえず後で説明しそうな奴らは後に回しておいて、今回の弾で登場してメタゲーム入りを果たしたいくつかのショットデッキについて話すとしよう。

 まず1つ目が【列車タマ】だ。
 ちゃんとクロスして使うクロスシグニとして、《轟左砲 ドーラ》《弩中砲 グスタフト》《轟右砲 ドスラフ》の性能は異常なまでに高かった。
 妨害されなければライフ7からでも相手にトドメを刺し得る列車クロスシグニ達に加え、タマの専売特許たる《アーク・オーラ》《先駆の大天使 アークゲイン》によるルリグアタックプランまで存在するこのデッキは、脅威のショットデッキとしてタマをメタゲーム上に呼び戻すことに成功する。

 ただ、このデッキは13弾の登場後すぐにメタゲームに姿を現したわけではない。
 理由として、この13弾の発売と前後してメタゲームに姿を見せた即死ショットデッキに、かなりのプレイヤーが意識を割かれていたためというのが挙げられる。

 そのデッキの名を、【台風ヘルボ】。
 一個前の弾で登場した《コードアンシエンツ ヘルボロス》と、かなり前に登場していた《台風一過》のたった2枚で成立する、相手の手札とエナを全て剥ぎ取る即死コンボ。前の弾より意識されてこそいれど少し動き出しの遅かったこのギミックは、龍を操る忍の力によって脅威的なショットデッキへと進化した。
 相手のエナと手札を全て奪い去った後、《幻竜神姫 バハムート》や《幻竜 ボルシャック》を展開。それだけで、相手は地上5~6点とルリグ1点を0エナで迎え撃たなければいけなくなる。しかも全員パワーは大体15000を超えていて火力バーストもほぼ届かない。
 何なら、今の環境ですらそこまでの盤面を作られれば立て直すことは困難であろう。当時であればほぼ無理と言って差し支えない。
 当時最も13弾で恩恵を受けたルリグは、まず間違いなく遊月であろうと言える。

 その圧倒的破壊力によってスピードの遅いデッキが潰されるようになってくると、当然ながらスピード感溢れるデッキが増える。
 特筆すべきは、鯖軸に押されて数を減らしていた【青赤緑爾改】の復権であろう。速さを求めて《羅石 アンモライト》へと主流が回帰したのと同時に、《幻水 スズメダ》というアドバンテージ獲得シグニが登場したのがその理由だ。

【焦熱ウリス】が《千夜の夜王 イフリード》+《好色の罪人 ベルフェーゴ》を多用して高速のゲーム展開に対応するようになったのもこの前後だ。
《エニグマ・オーラ》による高速デッキへの対応力も標準装備できたこのアーキタイプは、当時の高速化環境に綺麗にマッチするミッドレンジとして名を上げることとなった。

 これにより、13弾の環境は三つ巴の戦いになる。
 遅いデッキを駆逐する【遊月】の面々←速いデッキへの対応力を持った【爾改】【焦熱ウリス】など←中速程度の相手に勝てる【ピルルクΛ】など←遅いデッキを……といったじゃんけんのような環境は、新たなアーキタイプを持ち込むことこそ難しいといえど、メタ読みの面白さが光るデッキチューナー向きな環境だったといえる。

 ここまでで書けていなかったので、【ピルルクΛ】が《アイスフレイム・シュート》というバニッシュアーツを手に入れたということと、《MIRROR》という疑似《RAINY》を手に入れてさりげなく強化されていたという話は、今書いておく。



■二極■

 14弾環境は、特筆すべき出来事が多い、環境激変期だ。この文章を書く時点で、書くべきであろうことのあまりの多さに戦慄している。
 戦慄しっぱなしでも仕方がないので、勿体ぶらずにささっと書いていこう。

 規制によって当時の環境デッキがいくつか崩壊したというのが、14弾の発売当日に起きた変化だ。
《台風一過》+《コードアンシエンツ ヘルボロス》の同時規制によって、【台風ヘルボ】が死滅する。加えて《サーバント Z》《四面楚火》という2枚のリソース全搾取カードにも規制が施行され、【植物サバZ】や遊月系といったショット系の環境デッキは、その全てが環境から一旦退くこととなる。
 加えて《コードアート C・L》というピルルクのソリティアの要のカードも2枚制限へと追いやられ、前の環境ほど容易にソリティアすることができなくなった。

 一斉にトップメタのデッキが規制されていったわけであるが、なんと第2回世界大会の予選が開始したのもこの弾の発売直後である。
 大イベントに向けて新たなデッキを模索したプレイヤーは必然多くなり、環境が一気に混沌化することは容易に予想が付いた。

 ルールの変化に世界大会の影響。WIXOSSのメタゲーム変遷を振り返る上で特に重要なことはここまで見れば一目瞭然だ。
 そんな新環境、新たに登場したデッキを語る上でまず外せないのが【ピルルクAPEX】であろう。このアーキタイプは、WIXOSSというゲームを確実に一つ、次のステージへ押し上げたデッキと言える。

 前環境までを生き抜いた【ピルルクΛ】と違い、この【ピルルクAPEX】は大きなソリティアをしないデッキだった。する必要もなくほぼ全てが揃っていたし、むしろライフをキープしながら試合を進められた方が強いデッキだったのだ。

《コード・ピルルク APEX》が毎ターンほぼ無償で除去を行いつつ、エクシードから《リバイブ・フレア》や《FREEZE》を発射すればそれだけで3面防御が成立する。
 ルリグが青・黒の両方の色を備えているので、《コードアンチ A・L・C・A》も十全に働く。
 リソース獲得とダメージソースは《幻水姫 ダイホウイカ》が働くことで供給ができ、【コードハート M・P・P】はスペル軸もビートダウンも動きを鈍らせることができた。
 果てには、Lv5ルリグなので《コードアンシエンツ ヘルボロス》も使用可能。これを《コードハート M・P・P》と合わせることで、対黒ルリグの完全な制圧能力さえ発揮してみせたのだ。

 即ち【ピルルクAPEX】は、【ミルルン・ヨクト】以来となる『毎ターンの3面要求』『圧倒的な防御面数』『強力な妨害能力』の全てを兼ね備えたルリグだった。
《コードアンチ カイヅカ》の登場で防御面数が安定し、さあ環境に上手く滑りこめるかと期待されていた【焦熱ウリス】等は特に、出鼻を挫かれる形となってしまった形になる。
 世界大会でもシェアの30%が【ピルルクAPEX】。当時のあらゆる相手に優位が取れたこのデッキは、再び青の時代の始まりを告げた。

 と、ならないのがこの弾のすごい点だ。

 この年の世界大会を優勝することになったデッキは【燐廻遊月】。
 詰め手段を一気に奪われた遊月だが、メインデッキのギミックには損傷がない。ならば、新たな詰め手段が模索されるのは当然のこと。
《コード・ピルルク ACRO》ぐらいしか存在していなかった《燐廻転生》の使い手に遊月が名乗りを上げるのに、長い時間は掛からなかった。
【紅蓮遊月】から継承したビートダウン能力で相手の盾をほぼ確実に致死圏内まで持ち込み、《幻竜神姫 バハムート》によって地上の駄目押しまで加えた強烈なショットを決める。《紅蓮乙女 遊月・肆》の死亡耐性のおかげで、Lv5まで死なないことも容易。
 リソースを削る手段が薄まった代わりに、多少リソースがあっても耐えられないような要求を叩き込む。酷く合理的なこのショットデッキは、それ故に間違いなく強力だった。

 第2位のデッキは【動物緑子】。
 そう。圧倒的な人気を誇った【ピルルクAPEX】は、環境最大のデッキパワーを持ちつつ、しかし世界大会の決勝戦にはその姿を見せることなく散っていったのだ。

 それだけ、14弾環境は様々なデッキが登場した環境だった。紹介しなければならないであろうアーキタイプが後5つは存在しているという辺りで、これまでの一強環境とは違うのが分かるだろう。

 まず紹介するのが【アスレアイヤイ】。『毎ターン致死レベルのショット要求を仕掛けるビートダウン』という少しおかしなことをするこのデッキは、アイヤイが《緑肆ノ遊 アスレ【HARD】》を獲得することにより誕生した。
《肆ノ遊姫 ベイゴマ》がぐるんぐるんするだけだったはずのそれまでのアイヤイから一転、《緑肆ノ遊 アスレ【HARD】》は出るだけで全ての遊具が1面要求となり、ベイゴマを多少止める程度では普通にライフを削り取ることができる。
 エナが溜まることで《懐古の音色 リコダス》を防御札として採用することもできるため、防御面数も普通のショットデッキとは比べるまでもなく多い。
 複数ターンに渡る致死要求を耐えられるデッキは当時まだ少なく、【アスレアイヤイ】は環境の先陣を駆け抜ける一番槍だった。

 アイヤイを紹介する以上は【ウォスラループ】も外せないだろう。
《コードアート C・L》《美しき弦奏 コントラ》《快演》《参ノ遊 ウォスラ》。
 これらが揃った時点で、詳細は省くが無限エナチャージループが始まる。《TRICK OR TREAT》の連打で相手の手札は枯れ果て、《因果応報》で相手の盤面はサーバントのエナしか残らず、自分の盤面にはロングショット盤面と莫大なエナが残る。
 並ぶ者のいない理不尽の極みであったこのデッキは、《コードアート C・L》がこの後禁止された理由のひとつになっている可能性が高い。

 要求がワンショットレベルのミッドレンジに加え、リソース大量搾取カードが一斉規制された直後のリソース大量搾取系ループデッキ。アイヤイは使役するシグニを超え、プレイヤー達をも手玉に取って遊びだすルリグへと姿を変容させたのだ。

 2019年環境トップメタルリグとも言える《紡ぐ者》が登場し、【紡ぐ緑子】【紡ぐ遊月】といった【紡ぐ者】デッキが早速環境で動き出したのも実はこの弾のことだ。
 今では違うシグニによって耐性を得ることがほとんどだが、当時Lv5シグニに耐性を付与していたのは《羅星宙姫 ノーザンセブン》。相手ルリグによって防御方法がかなり絞られていた当時の環境、ピンポイントに耐性を付けて攻撃をゴリ押してくる《幻竜神姫 バハムート》や《幻獣神 マンモ》はそれだけで脅威であった。
 東京で最初に開催された世界大会予選、その決勝動画卓にて勝利を収めたのも、この【紡ぐ者】である。

 そして、将来隆盛するトップメタルリグが登場した一方、止め界隈に《水流の打落 ⁑マーライ⁑》がやってきた点も抑えておきたい。
 アンが序盤の攻撃を凌ぐために生み出されたであろうこのシグニだが、その完全耐性付与効果はあまりにも強かった。
 当時は【鯖軸2止め】のバリエーションのひとつとして登場したこれは、14弾で一時的に微かな流行を見せ、その後少し時間を置いて再登場することとなる。

 当時のルリグを話していると、あることに気付く。
【ピルルクAPEX】こそ青黒のデッキであれど、実はそれ以外の新規デッキは全てが緑を含むルリグのデッキなのだ。
 世界大会は、デッキパワー最強のピルルク、過去弾のノウハウをそのまま生かせる花代止め系とマユ系、新規勢の緑系という分布となった。

 こうして環境は固まって14弾は終わる、かに見えた。
 しかし、世界大会が終わるその前後。デッキの研究開発が遅れたために世界大会では名を残せなかったとあるアーキタイプが、突如として環境に湧き出す。

 その名を【貫女植物緑子】。当時は植物緑子と呼ばれていたが、6弾で登場した【植物緑子】と区別するために、ここでは『貫女』を付けて呼ぶことにする。

《サーバント Z》の規制で攻撃的なリソース搾取ギミックを失った植物軸は、一時は失墜し、環境からその姿を消していた。
 だが、ピルルクが《コードアート C・L》によるデッキの回転軸を活用して【スペルク】を【ピルルクΛ】へと受け継がせたように。《羅植姫 ゴーシュ・アグネス》という最強のリソース生成ギミックを失っていなかった植物軸もまた、そのギミックを最大限に活用することとしたのだ。

 機構の基本は、6弾で登場した【植物緑子】と同じ《修復》連打によるロングゲーム。
 しかし、《四型貫女 緑姫》による大量回収を獲得した緑子は、《四型緑姫》の頃とは比べ物にならない安定性を得た。Lv4の始動が困らず、《羅植 カーノ》をソリティア開始時に爆発させることで《コードハート M・P・P》も突破できる。
 青エナ基盤として当時最早お馴染みとなった《幻水姫 ダイホウイカ》が採用され、《四型貫女 緑姫》のランサー付与効果と合わせて攻撃力も十分に確保される。
 6弾で登場した【植物緑子】を完全に上回るスペックは、12弾の時点で確保されていたと言っていい。

 極めつけに、13~14弾で登場した3種のカードが、このアーキタイプを【ピルルクAPEX】と比肩するデッキパワーを持ったデッキへと昇華させた。
 それが《アンダー・ワン》《水天一碧》《羅植 ヤシ》の3種だ。

《羅植姫 ゴーシュ・アグネス》による圧倒的なリソース獲得能力と《修復》によるアーツに頼らない耐久機構を併せ持ったこのデッキは、ルリグデッキを妨害に割いても問題ない性能をしている。だからこそ、【ピルルクAPEX】含め環境に多々いるスペル多用系のデッキを軒並み止められる《アンダー・ワン》は、緑子にとってマストなアーツだったと言える。
《水天一碧》は、防御にもリソース回復にも使えた。《修復》前に大量得点を狙ってくる相手には防御として使用できたし、気を緩めたらリソースを搾取してくるような相手に対しては《水天一碧》→《水天一碧》の2連打でリソースを抱えてソリティアを再始動させることができる。当時はルリグデッキに同名カードを2枚以上入れても問題がなかったため、《水天一碧》のチェイン効果は容易に《水天一碧》自身とのシナジーを生み出してみせた。
 そして、ハンデスによるリソース搾取能力の強力化と蘇生による盤面の安定化、更にはダメージ源として八面六臂の活躍をする《羅植 ヤシ》は、このデッキを完成形へと持ち込む強烈なパワーカードとなる。

 稀代のソリティアデッキとして前弾までを生きたピルルクが、非ソリティアの多面防御多面要求ルリグとなる。
 苛烈に攻めるビートダウンとして名を馳せた緑子が、妨害能力と無限耐久機構を兼ね備えた当代最強のソリティアデッキとなる。
 奇妙な逆転現象を起こした2つのルリグは、それぞれに規制という名の終わりが訪れるまで、ここからしばらく環境で常に存在感を放つ頂点の二大巨頭となった。

 まだ2弾分しか書いていないのに既に1年目環境の7割を超える文字数になっていて、そろそろ疲れているのだが、そういえば14弾で登場したとあるアーキタイプを2つ書き忘れていたので、14弾環境の締めくくりとして書いておこう。
 ひとつは、《ブルーコードハート V・@・C》と《幻水 シャークランス》を使い、青スペルを撃っては《幻水 シャークランス》を起き上がらせてまた捻ってという繰り返しで膨大なリソースを獲得するギミックを盛り込んだデッキ。
 当時【ピルルクAPEX】の亜種として登場したこのギミックデッキは、後々【腹筋ピルルク】という地雷的なショットデッキとして生まれ変わっていくことになる。

 もうひとつは、15弾発売直前に中身が入れ替わったパーティーパックに収録された、《異国の黒船 ペリー》によって強化されたデッキ。
《ペナルティ・チャンス》や《クライシス・チャンス》、面埋めアーツなどで全面要求を止められがちだった《羅石 アンモライト》軸の爾改は、『自パワー以下のシグニを無条件でバニッシュできる限定なし下級シグニ』という絶好の相性を持つシグニを手に入れ、より一層その速度に磨きをかけた。

 さて、14弾環境が始まると同時に新規の繭の部屋が制定されたことはこの項の冒頭で書いたが、実は15弾環境に入ったその当日にも繭の部屋が施行されたというのは驚くべき点だ。
 たった2ヶ月ちょっとしか間を開けずに規制が施行されたのは、おそらく世界大会への影響を加味して前の規制でパワーカードを規制しきれなかったことが原因だろう。
 ここでは、《コードアート C・L》が使用禁止カードとなり、【ピルルクAPEX】が弱体化を余儀なくされると共に【ウォスラループ】は完全崩壊することになる。
 同時に《幻竜 アパト》も2枚までしか使用できなくなる。

 また、ルール処理の変更により、一部のシグニが実質的な弱体化を喰らうこととなった。
『出現時以外の効果で対象選択をする際、対象を選ばないことを選択することができる』というルールが『対象選択をする際、対象にできるカードが存在している場合、必ず対象を選択する必要がある』ことになったのだ。
 このルール変更によって特に弱体化したのが《羅植 カーノ》だ。元々自分の態勢が整うまで相手の盤面に触れずにデッキを回転させられた【貫女植物緑子】は、《羅植 カーノ》を爆発させた際に必ず相手のシグニをバニッシュしなければならなくなり、その挙動に淀みが出るようになってしまった。
 こうして、12弾からある程度続いていたハイパワールリグ達の環境に、一旦の決着が付けられることとなった。

 決着が付けられることになったが、相変わらず【ピルルクAPEX】と【貫女植物緑子】はトップメタのデッキであったし、【燐廻遊月】もメタゲームを生き残るデッキのままだった。

【ピルルクAPEX】は《コードアート C・L》が抜けたことによってできた穴に《羅植華姫 バオバブーン》と《大幻蟲 §オタガメ§》を投入することによって、より【貫女植物緑子】に対して立ち向かいやすいリペア構築となり、問題なく環境トップに居座り続ける。
 つまり、《因果応報》+《アンダー・ワン》という詰め手段に対して《羅植華姫 バオバブーン》+2コストのスペル(+《大幻蟲 §オタガメ§》)を使用するという防御手段を確保することで、緑子の最後の要求に対してより立ち向かいやすい形を生み出したわけだ。

【貫女植物緑子】【燐廻遊月】は流石に多少安定性が落ちたものの、緑子にとって《羅植 カーノ》の爆発が強烈な痛手になるかといえばそうでもなく、遊月にとって《幻竜 ボルシャック》のビートダウン性能や《燐廻転生》の破壊力は未だ健在であった。

 激変の14弾環境と比べると、15弾環境の変化は微々たるものと言えよう。
 それも仕方のないことだ。15弾は実を言うと、Lostorageシリーズの開始弾である。アニメと連動して新規登場したリル、メル、あや、ナナシという4ルリグを重点的に強化したこのパックには、それまでの環境を大きく壊すカードはほとんどなかったのだ。
 コインギミックも未だ控えめなもので、環境を大きく揺れ動かせるほどではない。
 環境の変化はしばらく、新規カードではなく『ピルルクが《コードアート C・L》を活用できなくなってハンデスの頻度が落ちた隙を突いて、手札を抱えて戦う【タウィル】【ユキ】などが増えてくる』というような変遷を辿ることになる。

 ようやく15弾環境に変化が訪れたのは、16弾発売のたった2週間前のことだ。
 カードゲーマーの付録として登場した《デッド・ゲート》は、【ピルルクAPEX】の《コードハート M・P・P》《コードアンシエンツ ヘルボロス》による強烈なトラッシュ利用メタを突破することができる、黒ルリグ待望のアーツだった。
 その登場を受けて【黒電機入り焦熱ウリス】が再び見かけられるようになり、また直前に登場した《フェイタル・パニッシュ》込みで最高値の有限防御力を誇っていた【ウルトゥム】が大会環境にちらほら姿を見せ出すようになって、ようやくこの長い長い4ヶ月環境は終わりを迎えた。



■さらば■
 続く16弾もLostorage新ルリグ登場弾であり、ここではママとドーナという2種類のルリグが追加される。
 ママはスターターに収録されていた《全知全能》にある程度注目が集まり、ドーナもその効果から強耐性の盤面を維持し続けるデッキになるかと期待が持たれたが、実際この2ルリグが環境に登場するのはもう少し後。

 この弾において特筆すべき出来事は、《イノセント・ディフェンス》によって様々なデッキが強化されたというものだろう。
 最も目立ったデッキと言えば【雪月風火】だ。各シグニの性能が強力であり、特に《羅輝石 マラカイト》がスペルとルリグの効果を受け付けない点が《コード・ピルルク APEX》に強いのではないかと少しずつ研究されていたデッキだったが、《イノセント・ディフェンス》《無二の征服 アレクサンド》による容易なバニッシュ耐性が登場することにより一気に凶悪性を増すデッキとなった。
《イノセント・ディフェンス》は回収効果まで持っていることから《一蓮托生》とも相性が良く、ルリグの性質上《紆余曲折》を搭載しにくい《雪月風火 花代・肆》と完璧に噛み合うカードであったといえる。

 それ以外の様々な赤ルリグに加え、こちらも同じく《紆余曲折》の搭載が難しくなりがちだった【動物緑子】などもこのカードを搭載。
 コントロール系のデッキにおいてもバニッシュ耐性や回収能力は強力であり、また本来ルリグアタックに防御手段を持ちにくいデッキでもタッチカラーをせずにルリグ止めができるため、《イノセント・ディフェンス》は環境が進むにつれて強力な汎用アーツとして認知されていった。

 新規強化弾であるため、環境の変化は汎用カードに集中しがち、となりそうだが、この弾はLostorage組初の環境入りデッキが登場したという点も思い出深い。

 Lostorage組はまだ登場したばかりで、前環境で僅かに【応報メル】などが入賞する程度。
 全体的にまだLostorage組はデッキパワーが足りていないと思われる中、《幻水姫 ダイホウイカ》《幻水 アオリイカ》という過去の汎用に点数要求を任せた【イカ軸あーや】がこの環境に姿を現した。
 トラップとして確実に攻撃をシャットアウトできる《大罠 ルパンヌ》やトラップを手札として使える《小罠 ネズコゾ》が登場したことにより、防御とリソースの獲得が安定するようになったこのデッキ。
 ここで登場した後、17弾では更に《小罠 トレインボム》や《ARROW RAIN》を手に入れて着実に強化の道を歩むこととなる。

 さて、17弾が待ち遠しい人がそこそこの数いそうだから、16弾環境についてはこのぐらいにしておくとしよう。

 14弾をパワーインフレの弾と呼ぶならば、17弾は「次のインフレを呼び起こす弾」だ。
 それを象徴するカードが、《アロス・ピルルク N》である。

 3か4弾の頃からメタゲームの片隅に居座り続け、【スペルク】で開花し、【ピルルクΛ】の登場からは常にトップメタルリグとしてその名を刻んでいたピルルク。
 その名を冠すにふさわしいデッキパワーでもって、【アロスピルルク】はすぐさま環境入りした。

 起動能力で手札の凶蟲を3枚切ると相手のシグニを1枚バニッシュできるこの《アロス・ピルルク N》の効果は、すぐに《大幻蟲 §オタガメ§》《幻蟲 §ユノハナ§》と組み合わせられた。
 捨てられたはずの手札がリソースを損失せずに場を埋めることで、1面防御が2面、3面防御へと変質する。手札を捨てた後にドロー効果が発動する。3枚の手札損失は、場に出て、手札が増えて、それで実質ゼロ損失。
 カード間のシナジーにより、【アロスピルルク】はありえないほどの低損失で2~3面防御をこなせるデッキとなったのだ。

 そして、この防御効果を使用するには、手札が潤沢に存在している必要がある。
 それは、【ピルルクAPEX】で非ソリティアが主流となったピルルク事情が、再び【ピルルクΛ】のようなソリティア主流へと戻ってくる大きな切っ掛けとなった。

 ただ、この弾は環境で唯一、【ピルルクAPEX】と【アロスピルルク】が共存し、また【貫女植物緑子】も生存していた環境。
《コードハート M・P・P》の、《アンダー・ワン》の圧力は未だ大きく、この弾の頃に活躍したのは《龍滅連鎖》と《ロック・ユー》を活用したショット狙いの構築がほとんどだったことは記載しておかなければなるまい。
 防御型が流行したのはこの頃開催されていたLostorageルリグ限定レギュレーション、あるいは次環境以降となる。

 コントロールデッキの次なる姿が見られたこの弾、新登場したのはこれだけではない。
《大盤振舞》というアーツが、ビートダウンに新たな風を吹き込ませた。

 3年目第一の環境の説明でちょこっと触れたカードを覚えているだろうか? 忘れた人はちょっとページを戻ってみてほしい。そう、《三焼揃踏》だ。
《大盤振舞》は、《三焼揃踏》と組み合わせることで絶大な効力を発揮してみせた。
 というのも、この《大盤振舞》、相手シグニのパワーを上げることで無理矢理相手シグニ3体のパワーを揃えることができてしまったのだ!

 赤1エナ、緑1エナの合計2エナから飛ばされる3面除去は、アーツ枠に余裕を作りやすい止め系のデッキにとって垂涎ものの性能。
 特に――そう。《集結する守護》程度でしか3面要求が成り立たなかった【2止めアン】が、とうとう《水流の打落 ⁑マーライ⁑》を場に残したまま容易に3面除去を行う性能を獲得したというのは、非常に大きな出来事だった。

 もう一つ、コントロールとビートダウンの新たな形が見られたこの弾で忘れられないのは《落華流粋》の登場であろう。
 リル、メル2種ルリグにおいて強力な性能を誇るアーツだが、より軽い色拘束でダブルクラッシュを付けられるようになったという点が大きかった。
《龍滅連鎖》、《一蓮托生》、《紆余曲折》。緑エナを使うことが多かった赤のショットデッキにとって、《チェイン・Wキャノン》の白白赤よりも赤緑無の方が圧倒的に準備しやすいことは言うまでもない。
 攻撃力の高いショットとして特に【縛魔炎】の人気が少しずつ高まる、耐性持ちのLv4シグニが最後に相手を殴り飛ばす構築が登場するなど、ワンショットについての需要も高い弾だったと言えるだろう。

 さて、ところで《落華流粋》がショットデッキを使いやすくしたのはいいとして、元々の使い手は……?

 実はこの弾の頃、【救念リル】は中々質の良いビートダウンとして完成してきていた。
 発売当初は《矜持の豪魔 オダノブ》のトリプルクラッシュ一発芸にかなり動きが寄っていたリルは、16弾で《十字の炎槍 サナユキ》《隠密の十勇 サイゾウ》と《救念の記憶 リル》を、17弾で《野生の土躰 エンキド》《武相の全知 ギルガメジ》を獲得。
 リソースの無駄なくシグニだけでソリティアのようにデッキを掘り続け、毎ターン強力なLv4ライズを確実に複数並べて行く。高い攻撃力とロングゲームに耐えうる性能を持ったルリグとして、アニメの主人公ルリグらしく見事に環境で戦い得るようになったと言えただろう。

 環境は、移っていく。
 3年目の環境は、ワントップに支配されたものではなかった。ただデッキパワーの高いルリグがいて、しかしその二大巨頭には負けぬと言わんばかりに他のルリグもしっかりと力を増し、環境が多様化していく。そうやって、環境はインフレーションしながらもバランスが取られていく。
 まるで、WIXOSSというゲームの方向性を牽引するかのように。

 これは多分、3年目の出来事の集大成として、ここに書いておいた方がいいのだろう。
 18弾、【コンフレーテッドセレクター】発売日に、カード規制が掛かることが発表される。

 環境を引っ張り、それでもなお強かった【ピルルクAPEX】と【貫女植物緑子】は、それぞれ《コードハート M・P・P》及び《CRYSTAL SEAL》との同時使用制限、《修復》の3年越しの使用禁止という規制を受け、それぞれの最大の強みが消えることになる。
 あたかも役割を終えたかのように。二大巨頭は、新たな環境と新たな構築に後を譲り、その8ヶ月にも及ぶトップメタのキャリアに終止符を打った。


 頂点達よ、さらば。



■メタゲームに新規で登場したデッキ群■

WX13
【列車タマ】
【台風ヘルボ】

WX14~WX15
【ピルルクAPEX】
【燐廻遊月】
【紡ぐ者】
【アスレアイヤイ】
【ウォスラループ】
【貫女植物緑子】
【腹筋ピルルク】
【ペリー爾改】
【タウィル】
【ウルトゥム】

WX16~WX17
【雪月風火】
【イカ軸あーや】
【アロスピルルク】
【2止めアン】
【縛魔炎】
【救念リル】
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